経営リソースとしての「ジンザイ」
経営マネジメントを考える際、経営リソースを「ヒト」「モノ」「金」「情報」という切り口で考えていくと思います。その中で、「ヒト」については、経営者それぞれで大きく哲学が異なるリソースだと感じます。例えば、社員について論じる際の表現一つにしても「人材」「人財」と漢字表記が分かれます。
そこで経営者は経営リソースとしての「ヒト」≒「ジンザイ」をどう考えるべきでしょうか?
「ジンザイ」の4つの分類 -「人財」「人材」「人在」「人罪」-
まずは「ジンザイ」論で良く語られる4つの漢字表現を見ていきましょう。
- 人財・・・実績もあり、成長が期待できる人。企業的に欲しがられる人。
- 人材・・・実績はないけど成長が期待できる人。普通の人。
- 人在・・・実績はあるけど、それ以上の成長が見込めない人。
- 人罪・・・実績もないし、成長も期待できない人。企業的にはお荷物。
※引用(人材、人罪、人在、人財の考え方)
そして『ジンザイの4分類』とセットで論じられるのが「2:6:2」の法則です。
ハチやアリの世界では、全体の約2割は非常によく働き、6割は普通に働き、残りの2割はあまり働かないという研究結果からよく語られる法則です。
さらに、働かない下位2割を強制的に取り除いたとしても、残った個体の中でまた「2:6:2」になるように仕事ぶりが変化してゆくという研究結果も出ています。
これらは人間の組織でも当てはまり、人事・組織論の分野でしばしばベースとなる考え方です。
この「2:6:2」の法則と「ジンザイの4分類」を合わせて考えると、優秀な上位2割が「人財」、普通の6割の中の上半分が「人材」、下半分が「人在」、そして最後に下位2割が「人罪」ということになります。
この論調の中では、経営者は下位2割である「人罪」は退出してもらうべきだと考え、リストラの対象としますが、下位2割の「人罪」をリストラしても、時間と共に再分類が行われ、「2:6:2」に戻ってしまうのです。
経営者が大事にすべきは、どの「ジンザイ」か?
最近は、この議論が広く知れ渡るようになり、「人財」が大きく持ち上げられているように感じています。
「わが社は人を大事にしている会社です!」と言わんばかりに「人財」という言葉をわざわざ使う経営者が多くなっています。特に労働集約的で人が資本であるサービス業の経営者に多い印象があります。
しかし私は、この風潮に疑問を持っています。
結論から言うと、経営者が人的リソースを語る際は「人材」を使うべきだと思っています。
人口が大きく増えていく時代の経営では「ジンザイ」を上記のように分類して評価し、ポートフォリオを組み替えるように新規採用とリストラを行いながらマネジメントしていく事も合理的だったかもしれません。
しかし、これからの人口減少・労働人口減少時代においては、どの企業も十分な人的リソースは確保できない為、人材をいくら4分類してもその先に打ち手はありません。
一旦、「ジンザイの4分類」に戻ってみましょう。漢字のニュアンスから新たに下記のように解釈が出来ると思います。
- 人財・・・人を財産として捉える考え方。財産の為、単体でお金を稼ぐことが可能。使用者(経営者)にとっては保有しているだけで特に手が掛からない。
- 人材・・・人を材料として捉える考え方。材料なのでそれぞれの特性を見極め、最も活かせる使い方をするのが使用者(経営者)の腕の見せ所。
- 人在・・・人を労働主体として捉える考え方。業務を回すだけの役割であり、システムやAI・ロボットで代替可能。
- 人罪・・・人を犯罪者として捉える考え方。給与泥棒であり、企業内部から排除する事に手間がかかる。
以上のような考え方をすると、社員を「人財」と表現する経営者は一見、人を大事にするように思わせながらも何もしない経営者という事です。最近、あらゆる経営者を見てきてこのことを強く感じるようになりました。
今後、「人財」と評価する社員は、起業やフリーで活動する方向性に加速しますので、このような経営者のもとで働く意味はなくなり、急速に社外に流出していきます。
一方、本当に社員を想い、活かそうと考えている経営者は「人材」と表現する事が多いです。「人材」の”材”は材料の”材”です。材料だと捉えると、それぞれの材料には特性がある事が容易に理解できます。
建築で例えるならば、大工はあらゆる木材の特性を知り尽くして最適な建物を作り上げます。建物の立地環境に合わせた最適な材料の選定から、その材料の強みを最大限発揮できる使い方や加工の仕方の選択、さらには弱みを打ち消す為の方法、最適な他の材料と組み合せ方など複雑に行っていきます。
この考え方が経営でもそのまま当てはまります。
『「ヒト」という材料をいかに上手に使って事業を作るか』が、経営者の腕の見せ所であり、経営スキルの高さです。優秀な経営者は社員、アルバイトを問わず、従業員それぞれの個性や嗜好性を徹底的に知り、各自が最も力を発揮する環境を用意しています。そして社員一人一人のモチベーションを会社のビジョンに集約させ大きな組織力を引き出しています。これが実現すると優秀な人材がどんどん集まり、ますます組織力が増していくのです。
今後は、この2つの異なる考え方をする経営者の間で大きな差が生まれていきます。その為、経営者には従業員を「材料」として捉え、社員一人ひとりの強みや好きを見出し、適材適所の労働環境を用意するマネジメントに全力で取り組んで欲しいと思います。それが結果として最も従業員を大切にする経営となるのです。

